【回想−哀愁の母娘−】33





一.

 三日が経った今も、恭子のアナルフィースト姿が目に焼きついていやがる。

 不思議だぜ。

 アナルフィーストの一つや二つこの世界では何てことない一場面に過ぎない。
実際、恭子にも負けず劣らずの人妻奴隷が小さな己のアナルに手首を差し込ん
で悶えていく姿を何度か見たことがある俺だ。

 だが、魅了する恭子の尻だけは格別なのかもしれん。

「ちっ、どうもあいつら母娘に関わると調子が狂っちまうぜ」

 商売を邪魔するのは恭子だけではない。

 加奈の膨らんでいく胸や熟成されていく乳首を見ていると商品に対して燃え
上がってくるはずの気持ちは、雨にたたかれたように消化されてしまうのだ。



「おや? アンタがこんなに早く顔を出すなんて珍しいねえ」

 蔵元の婆さんが笑っていやがる。 それもそうさ、俺は三日前に婆さんのこ
の館を訪ねたばかりなのだからな。

「坂本様って加奈に忠実なんですね? うふふ」

 美幸がそう言って俺をからかいやがった。

 加奈と約束しちまった「明後日には来る」が今日なのだ。 まさかその約束
の日に俺が現れるとは美幸も信じられないという表情を見せている。

「約束したからじゃないぞ。 他に用事があって訪ねて来ただけのことだ。
たまたま日にちが重なっただけ、だから勘違いしするんじゃないぞ」
「あら? 御用なら電話でもよかったのではありませんか? 今まではこちら
からいくら誘っても電話で済ませていたじゃありませんか。 くすっ」

 言い訳無用とばかりに美幸は俺の痛いところを責めてきやがった。

「その用事とは西村のことじゃろ? 話を聞けば奴らは、大林翁の館へ探りを
入れに行ったそうじゃないか」
「そうそう、実はその要件でここへ」

 話しを切り返す婆さんの言葉に俺は上手く乗ったつもりだが、婆さんと美幸
は心配してみせる俺をシラけた視線で睨んでいやがる。

 呆れた視線を浴びせられるのも無理はない。
 
 加奈の存在を探る西村が、爺さんの次に狙いを絞るのは婆さんの屋敷ではと
勘ぐりたいところだがそれは心配無用なのを俺は知っている。 西村はこの婆
さんを苦手としているからだ。

「ふんっ、何もそんなに心配しているような小芝居をしなくとも素直に加奈に
会いに来たと言えばよいではないか」
「いや、だから別の用事で……」

 言い訳をしているわけではない。 確かに加奈の様子を見に来たことは本当
のことである。 しかしそれは、加奈を取り巻く環境が慌しくなり、どういう
手順で売り出すかを再度確認すること、それが目的である。 そしてもう一つ。

「別の要件とは絵里子の母親と姉のことだろ?」

 さすが婆さんだ。 俺の考えを直ぐに読み取りやがった。

「はい……」
「噂はいろいろと聞いておるよ。 西村の血も涙もない残酷極まりない仕打ち
に、その姉の方は酷い姿になっているそうじゃないか」
「……………………」
「だからと言ってアンタがそれを背負う必要もなかろう。 そんな話しの一つ
や二つ、この業界では当たり前のことだろうに」
「ええ、それはそうですが……」

 日常茶飯なことに一つ一つ突っかかっていてどうすると婆さんが俺を諭す。


二.

 同じことを皐月にも言われていた。

 アイツの場合は強制的、且つ脅迫に似たものだったが……


「こちらが動きさえしなければ西村氏らも動きようがないのよ。 わかってい
るでしょ?! 絶対に千佳を助け出そうなんて考えをおこさないで!」
「ああ…… そうだな」
「そうだなって! 坂本様はわかっているの?! これ以上、西村氏らが追求
できないよう、せっかく御主人様が努力されてきたのにそれを水の泡にしない
で頂戴!」

 皐月の柔らかな唇にそう誘われると俺も困ってしまう。 くっきりと浮かび
上った真っ赤な唇、美人顔に備わった唇を見ていると一つの生殖器として見え
てしまうから不思議だぜ。

「お前の言うとおりにするさ……」

 と、囁きながらいつもより濃厚な接吻を皐月の唇に浴びせていく。

「んんっ! は、話しは、まだっ! んんっ! ……まだよ…… あぁん……」

 その日のSEXはとても激しいものになった。 バックからの責めに弱い
皐月に何度も肉の塊を突き刺しては俺に説教する皐月を昇天へと導かせた。 

 俺の意思がまるで宿ったかのように狂熱する肉棒、その激しさに皐月は言葉
を失い何度も何度も絶頂の嵐に渦巻かれていくのであった。


 揺るがない俺の意思を感じ、そして皐月は婆さんに俺を説得して欲しいと根
回しをしたのだろう。

「下手をして、あの小娘を西村らに略奪されてしまうかもしれんぞ、坂本……」

 加奈を手放すことだけは許さないよ、と、俺に凄い威圧を掛けてくる婆さん。

 大丈夫だという保障はゼロに近いかもしれん。
 逆に、千佳に近付くことで加奈の存在をヤツらに知らせる引き金となってし
まいかねない。

「それは十分わかっています。 しかし、千佳という女の状況を聞かされた以
上、黙って見過ごすわけにもいかんでしょ」
「おや? アンタはいつから感情に走る男になったんだい。 加虐趣向の坂本
にしては珍しいことじゃないか」
「私はただ、明美のような精神凌辱奴隷を増やしたくないだけ……」
「本当かね? 私にはそれだけとは思えないね。 聞いたところ、その千佳と
いう女は加奈によく似ていると言うじゃないか。 それを心配しているアンタ
が救いに向うというのもわからんでもないが」
「私が心配? い、いいえ、加奈とは何の関係もなく、一つの商品を壊したく
ないだけで」

 必死になって言い訳する俺を、婆さんはソファーに深く腰掛けて天を見上げ
て笑いを堪えていやがる。

「母親と千佳、母娘共に商品となっていることからまるで恭子と加奈の母娘を
見ているようじゃないか。 なぁ坂本」

 何をこの婆さんは言おうとしているんだ……

「娘を救いたい母親の気持ちに応えようと必死のようだね。 くくっ坂本……」
「そんなことはこれっぽっちもありませんよ。 しかも、母親と言っても私は
千佳の母親に会ったことは一度もありませんしね」
「相変わらず惚けるのが下手くそだね、お前さんは…… 千佳の母親のことを
言ってないことくらいわかってるくせに」

 そう言うと婆さんは、俺に耳をかせと言う。

 実にやばい展開だぜ……

「もっと近くに寄ってごらん」
「あの…… な、何か……」

 相変わらず甘い匂いを漂わせる薔薇の香水の匂い。 その誘いに頭が撹乱さ
れていきそうな俺は、耳元で囁く婆さんの囁き声に誘導されていく精神が砕か
れそうになり恐い。

 嫌、本当の恐さは婆さんの囁き声だった。

「坂本…… どうやらアンタ、恭子に惚れたようだね」


三.

 これだから年寄りには付き合いきれん。

 驚いた俺の顔を見て婆さんが腹を抱えて笑っていやがるのだ。

 からかうにも度が過ぎるぜ……

「と、取りあえず今日はこれで失礼します……」
「おや? 何をそう慌てているんだい。 冗談のつもりで言ったのだが、どう
やら図星だったようだ」

 俺が恭子に?

 冗談じゃねぇぞ。 あいつは一つの商品、俺はそれを売買する仲介者だ。
間違っても惚れたなどと商品に気持ちを入れ込むなど有り得ん。

「商品にそんな気持ちをいだくなんて考えられませんよ。 先生……」
「他人の気持ちは思い通りに操れても、自分の気持ちがわからんようではまだ
まだ修行が足りないねぇ、アンタは」

 老い先短いと何を考えているのかわからなくなっちまうぜ。

 とにかくこの話を切らんことには、俺の背後で耳を欹てる美幸に怪しまれて
しまう。 と、思った瞬間だった。

「恭子をそんなに抱きたいのかね! そうかい、何なら私が大林翁に頼んであ
げてもいいんだぞ。 あっあはははっ」

 高笑いする婆さんの言葉にいち早く反応したのは俺ではなく、恭子と言う名
に反応した美幸であったのは言うまでもなかろう。

 軽蔑する冷たく鋭い視線、それと交わって嫉妬の念が俺の背中を突き刺して
くるのだ。

 まぁ、俺を甚振ることで婆さんもこれで少しは気が済んだだろう。

 悪いが、後は皐月を上手く言いくるめてくれることを婆さんには期待しておく。


 しかし困ったもんだ。

 帰ると言う俺を、婆さんと美幸は強引に加奈の調教部屋へと引きずっていく
のだからな。

 その部屋は薄明るい照明に照らされ、若い女のエキスが充満しているのがわ
かる。 漂っている匂いが加奈の体内から放流された匂いだということも直ぐ
にわかった。

 その中央、ベッドの上に二人の姿。

 加奈、そしてもう一人の美女、絵里子だ。

 驚いたぜ。 絵里子の姿形は数日前と変わっちゃいないが、内側から溢れ出
している色気はまったくと言っていいほど女の匂いと何一つ変わっちゃいない
のだ。

 数日前に見せた絵里子の姿とはまったくの別人に見えるぜ。

「どうだい、驚いたかね」
「えぇぇ。 数日前のあのときはまだ男のプライドを隠しきれていませんでし
たよね。 この数日の間にどんな調教をされたのですか?」
「何もやっちゃぁいないよ。 あの少年には女の素質があることは充分にわかっ
てはいたが、こんなにも早く期待に応えてくれるとは私らも予想だにしていな
かったよ」

 婆さんが視線を送る先、絵里子と加奈の二人が互いの総身を素っ裸のまま刺
激し合っているのだ。

「あんな風にここ三日間、二人の肉体を交わらせてみていたのだがその相性が
余程良かったのか絵里子の心がわかるように脱皮してきたのだよ」

 成人の女に熟成していく加奈のエキスを、女に変化していく絵里子がその成
分を蓄積したのだろう。

 心は女として既に歩んでいる。

 残すは性転換のみ。 数ヶ月後には、加奈の美貌や美肉にも劣らぬ絵里子の
姿が拝めるかもしれん。


四.

「自慢な息子の今の姿を知ったら、絵里子の母親はさぞ驚くことだろうね」
「それはそうでしょう。 母親は、絵里子……いや、息子の日下部道行を立派
な跡継ぎに育てようと懸命に教育していたと聞きます。 逞しく育てた息子が
今では化粧を施した女に変わってしまったとなると、さぞやショックを受ける
ことでしょう」
「しかしその母親も、絵里子には知られたくない生活を今では過ごしていると
言うじゃないか」

 西村のグループに所属している男が千佳の母親を飼っていることを婆さんの
耳にも届いたようだ。

 良妻賢母の性格を利用し、その神経質な導火線に凌辱的な火を放ってやると
真面目な女ほど導火線の火花は加熱して燃え広がっていく。 テクニシャンの
男共に卑猥な刺激の快感を繰返し肉体に教え込まれ、それに順応するのは日頃
遊んでいた女よりも何も知らない素人の方が早い。

 千佳の母親もまた、恭子同様にその典型的なパターンに陥ったようだ。

「寝る間も与えられず男らの相手をさせられているというじゃないか」
「ええ、当初は技巧者の男に今まで味わったことの無い官能の刺激を徹底的に
熟した肉体に教え込まれたようです」
「身体が男を求めるように仕込まされたわけだね」
「はい。 一週間も経たずに千佳の母親は欲情的な肉体に改造させられたと聞
きました」
「熟女好きなお客が数え切れないほどに多いこの世界。 直ぐに客がついたこ
とだろう……」

 婆さんの言うとおり、千佳の母親の肉体を買いに訪れた客はあとを絶つこと
がないそうだ。 そして、多種多様な男らの趣向に、熟した母親の肉体は更に
発情していくのは目に見てわかる。

 千佳とはまた違う道。 快楽という地獄の茨に堕ちていく母親……

「しかし坂本、母親の情報はいろいろと耳に入ってくるが、肝心の千佳につい
てはどうなっている? 仲介した男から、その後どんな仕打ちを受けているの
かを聞いていないのかね」
「えぇ…… 仲介の男も、千佳を訪ねて西村に何度も面会を要求しているそう
ですが未だに会わせてもらっていないようです」
「生死もわからぬのか? わからぬものをどうするつもりだ、坂本」
「仲介の男に聞いた話ですが、西村らは近々商品を曝した品評会を催すらしい
です」
「品評会を? 成るほど、凌辱調教の披露会、そのステージに千佳が曝される
可能性は高そうだね」

 西村が催す品評会で、それぞれ変わり果てた千佳と母親を会わせる確立は高い。

 母親に仕込まれてきた今までの調教内容を考えただけでもそれはわかる。

 婆さんもそれに気付いたようだ。

「狂気的なアヤツらにしては、母親への調教がやけに生ぬるいと思っていたが、
そこには奴らの企みがあったわけか」
「そうです。 千佳にとって今でも母親は救いの神様の存在。 しかし久し振
りに再会する母親が男狂いに欲情した女になっていたらきっと千佳は生きる力
を失うことでしょう」
「成るほど。 色欲に狂う母親、かたや肉体改造に狂気する娘。 互いに平和に
育ってきた二人を最悪な状態のまま再会させるのが奴らの狙いってことかい」

 抵抗する気力を失った千佳を、西村は好き勝手に痛めつけていくに違いない。

「そうなる前に千佳を救いたい気持ちもわかるが、その品評会の招待状は届い
ているのかい? 坂本」
「招待状? いえ、それは届いていませんし届くこともないでしょう」
「なんと?! 招待状も無くてどうやってそこの会場へ入り込むつもりだ」

 策などなにもない。 俺は、招待状が届いている千佳を仲介した男について
いくだけなのだ。 強引に会場に入る計画もない。 受付けに俺の顔を見せれ
ば西村は喜んで俺を中に入れてくれるはずだ。

「加奈を探っているあいつ等の中にワザと入っていくつもりか」
「えぇ……」
「無事に帰れんぞ。 いや、帰れないだけじゃない。 加奈の存在をあいつ等
に知られてしまうことになるかもしれん……」
「それは覚悟の上ですよ、先生。 もし、そうなったときは……」
「そうなったときは?」
「私と加奈をこの世から抹消してください」

 その言葉に緊張の糸が張り詰めた。

 婆さんは何も言わずに重い溜息を一つついていくのであった。

続く